Simple escape




俺はいつも、地味な役回り。





「南くん、これ・・・」


俺と、目の前にいる知らない女の子。

時間は、放課後。俺は部室に行く途中。



「あの、これ・・・」



ラッピングされた四角い箱。サイズは・・・普通?



「・・・わかったよ」



とりあえず、受け取る。

受け取っても、別に嬉しくない自分が、少し悲しい。










△▽△










がちゃり。



「南やっほーぅ」
「おぅ」
「南、俺もう着替え終わったから先に出るぞ」
「ん」
「南部長!亜久津先輩がいないんで僕探してくるです!!」
「程々にな」
「ぶちょ〜、俺近くのケーキバイキング行きたいんで部活サボっていいですかぁ?」
「あ、新渡部先輩!俺も行きたいっす!」
「お前らはダブルス練習あるだろうが」
「ちぇ〜」「ちぇ〜」



カバンを開けて。
ユニフォーム取り出すついでに、さっきもらった箱を取り出して。



「部長、それ貰ったんですか?」
「ハズレ室町。千石」
「ん〜?」
「お前宛て」



適当に、千石のいる方向に放り投げて。



「うわっと。って、また南預かってきたわけ・・・?」
「好きで預かったんじゃぁない。相手が渡してくるんだ」
「ふーん・・・あ、中の手紙に「千石くんへ」ーって書いてある」



ほらな。

俺宛じゃないプレゼント渡されても、嬉しくも、なんともない。
空しいとも感じないのは、慣れたから。



「なぁんで直接渡してこないかなぁ。お、リストバンド」
「よかったな。お前リストバンドなくしたんだろ」
「そうそう、お気に入りのやつ失くしたんだよナァー」
「・・・千石さん、前から言おうと思ってたんですけど、そのリストバンド俺のロッカーにありますよ」
「うっそ!?なんで?!俺室町くんのロッカーに入れた覚えないんだけど!」
「俺だって知りませんよ」



直接渡せないのは、お前がハデすぎるからだろ。
俺は目立たないから、他のファンの子の目にはつかないし。千石と同じテニス部だし、友達だし。



「んー見つかったんなら、このリストバンドもらえないナァ・・・」
「なんでですか、せっかく貰ったんなら」
「俺はお気に入り見つけたらそれしか使いたくないのー。俺は一途だから」



着替え終わり。東方、ストレッチ済ませて待ってるだろうな。



「南ー」
「なんだよ」
「あげる」



さっき、俺が放り投げた箱の中身が。
俺のほうに飛んで戻ってくる。



「っと。お前がもらったものだろ、俺に渡すな」
「ナイスキャッチしといて、いらないはないでしょー」
「お前が投げるからだろ」
「今日のー南はー不ー機ー嫌ー」
「うーるーさーいー」



飛んできた箱の中身・・・リストバンドを突っ返して。ラケット持って、部室を出た。



「・・・やっぱ不機嫌じゃん」
「俺から見てもわかるくらいですから、相当ですね」
「室町君や、それを南に指摘したりしないように」
「わかってますよ。練習量、増やされますからね」


「あんなに不機嫌になるくらいだったら、最初から断れば」
「うちの部長が、女の子の頼みを断るような人に見えるのかな」
「・・・見えませんね、確かに」
「優しいからね。ダレにでも。だから腹立ってるんでしょ」
「自分にですか?」
「自分80%。女の子に15%。優しい南でも、さすがにイライラするでしょ、女の子に」
「残りの5%は?」
「俺5%。原因は、俺だからね」


「原因わかってるのに、何もしない千石さんもズルイっすよね」
「仕方ないじゃん、当の女の子は南を通してくるんだから」
「でも名前書いてるから会えるじゃないっすか」
「それはそれ、これはこれ」
「メンドくさいんですね」
「言っちゃダメ」










△▽△










「南くん、これ・・・」



俺と、目の前にいる知らない女の子。
時間は、放課後。俺は部室に行く途中。



「これ、その・・・」



ラッピングされた四角い箱。サイズは・・・普通?



「・・・わかったよ」



数日前と、同じ構図。また受け取って、また部室。



「うぃっす南ー」
「うぃー」
「南、あとで試したいフォーメーションがあるから、付き合ってくれな」
「わかった、あとでな」
「南部長!亜久津先輩が、サボるって言ってどっかいっちゃいました!」
「探してとッ捕まえてくること」
「部長!俺いいゲーセン見つけたんでサボって行ってきていいですか!」
「喜多ぁー俺も連れてけぇ」
「サボると公言した人間にやる慈悲はない」
「えー」「えー」



「千石ー」
「っと。また?」
「また。お前宛。今度はちゃんと素直にもらえ」
「前のリストバンド、素直にちゃんともらったっての」



俺にまわすなってことだっつの。



「中身は・・・お、手作りクッキー☆しかも手紙つきー☆」
「プレゼントは人前であけないほうがいいと思うんスけど」
「いいのいいの、俺がもらったものなんだから、俺がどうしようと・・・」



「・・・南くーん」
「あー?」
「これ、君宛なんだけどー」
「・・・は?」



「てーがみ。君宛になってますよーん」
「お前それすごい笑えない冗談だぞ」
「・・・部長、千石さんウソついてませんよ。ほら」



小さく四つ折りにされた手紙には。間違いなく「南先輩へ」とかかれてて。



「・・・・・・・・・・」
「・・・なんかさぁ、もっと喜ぼうよ南」
「・・・・いや、なんか・・・・信じられないっていうか・・・」
「俺、部長殴りましょうか?」
「いや、それはいい。現実だってことは理解してる」
「理解してんのなら、さっさと受け止めてはい喜ぶ!」
「う、うわぁ〜い?」
「なんで疑問系・・・」



「まぁとりあえず、これで南も地味脱出だ」
「・・・脱出になるのか?」
「十分ですよ、あとは東方先輩も脱出すれば地味ーズ地味じゃなくなります」
「室町、面白がってないか」
「全然面白がってなんかいませんよ」
「試しに雅美クンを呼んでみよう。
雅美くんの地味ッ子ぉぉ!!



地味って言うなぁ!!!



「おお、叫んだ瞬間に来たよ」
「普通に呼べば問題ないじゃないか・・・」
「それじゃあ面白くないじゃないですか南くん」
「ダレだ今地味って言ったのは・・・!!」



東方雅美くんが、俺のパートナーが、野生児みたいな目になってます。怖い。



「まぁまぁ落ち着きましょう、東方くんや」
「ていうか今地味って言ったのお前だなお前なんだな千石」
「知りませんそんなこと。それよりも、南がついに地味脱出したぞー」
「?!お前地味じゃなくなったのか?!」



なんだか言い方が酷くないかパートナー。



「いや・・・なんか・・・そう、らしい」
「つーか地味脱出ってどうやったら出来るんだよ」
「そりゃぁもう目立つようなことが起きたらさ」
「目立つようなこと・・・?」
「南部長は、後輩の子にプレゼントもらったんです」



「・・・プレゼントの、中身は?」
「クッキー。しかも見た感じ手作りー☆」



千石は箱をウェイトレスのように持って、高々と掲げる。



「千石」
「んー?」
「そのクッキー、俺たちで食べるぞ」
「東方?!お前何言い出して」
「南がそのクッキーを手にして食べなかったら意味が無いんだ!食べるぞ千石!!」
「よっしゃー!いっただっきまーす!」
「ちょっと待てこらオィ!!!」
「千石さん、俺にも一枚」
「室町まで?!」



地味脱出・・・かぁ。


クッキーは2、3枚食べられたけど、一応食ったし・・・。


今度ちゃんと会って、お礼しないとなぁ。



***あとがき***
うわぁすごい、中途半端に終わらせてるね!いいよいっつもこんな感じだから・・・いいよ・・・。
このネタは何気なく思いついて書いてみました。何気なくね。
南フィーバーだった頭で思いついたモノ。突発的に書きたくなった。届け屋のネタも残ってるってのになぁ;

2003/9/27 柊華音